新潟県長岡市寺泊大野積の高津(金五郎)家は、八百比丘尼の生家であるとする伝承がある。
現在も旅館「お宿まつや」として存続していて、「八百比丘尼の入定御影」や「九穴の貝」といった遺物も残されている。
こんな言い伝えが残されている。
その昔、お弥彦さま(越後開拓の祖神 天香山命)が野積浜にいたころ、人魚の肉を集落の人に振舞った。
人々は気味悪がり途中ですててしまったが、金五郎だけは誤って家に持ち帰った。
その肉をみつけた娘が興味本位で食してしまったため、不老不死になったという。
その後、16、7歳で嫁入りするが娘は全く歳を取らず、夫には先立たれ、次の夫にも先立たれ・・・
悲しみに暮れた彼女は尼となり、諸国を行脚することを決意する。
旅立つまえ、庭に一本の松を植えた。そして「この松が生きている限り、自分もまだ生きている」と言い残して旅立ったという。
その松も、宿の中庭に現存している。


いくつかのこる八百比丘尼の出生譚のひとつ。遺品など、ここまで多くの資料が集まって残る場所も珍しい。
八百比丘尼が大切にされてきたことが感じ取れる場所だ。
また、対岸の佐渡ヶ島にも、八百比丘尼の生誕譚が残っているのが興味深い。

