群馬県前橋市下増田町には、八尾比丘尼が住んでいたという話が残る。
その場所は「比丘尼台」と呼ばれ、広瀬川と荒砥川(あらとがわ)が合流する場所、現在では「前橋フットボールセンター」となっている。
昭和47年(1972年)3月発行「広報 まえばし」の「伝説とその付近 (70)」には、比丘尼台とその伝承についての記事がある。その中に場所についての詳細な記載がある。
https://www.city.maebashi.gunma.jp/material/files/group/10/19720315.pdf

その昔、下増田の集落で庚申待をしていたとき、客の一人が見知らぬ魚を持ってきた。
庚申の一人が勝手に食してしまったのだが、その身勝手を責められ村から出て行くことになる。そして去り際に小さな松を一本植えた。
何年か経ち、懐かしさのあまり故郷に戻ってはみたものの、知っている顔は一人もおらず、植えた松も立派な巨木になっていた。
どうしたものかと松を切って年輪を調べ、800年が過ぎていることに気がついた。
比丘尼はその場所に庵を作り、翌年大往生を遂げた。その場所を比丘尼丘という。(現在「比丘尼丘」という地名は確認できない)
またこのとき見知らぬ客は、付近を流れる広瀬川の竜宮という場所からやってきたという。
隣にある宮子町の、広瀬川のほとりに竜神宮があり、そのあたりのことと思われる。

